ラングドックサソリ
~ファーブルが研究したサソリ~

英名:
Common yellow scorpion, Languedoc yellow scorpion
学名:
Buthus occitanus (Amoreux, 1789)
科名:
分布:
アルジェリア、ブルキナファソ、ジブチ、エジプト、エチオピア、ガンビア、ガーナ、ギニアビサウ、リビア、モーリタニア、モロッコ、ナイジェリア、セネガル、ソマリア、スーダン、チュニジア、キプロス、イラク、イスラエル、ヨルダン、レバノン、フランス南部、ギリシャ、ポルトガル、スペイン、(サウジアラビア、トルコ、イタリア (シチリア)、マルタなどにも分布している可能性があります) (Fet et al., 2000)
体長:
45~80mm (Colombo, 2011)

『ファーブル昆虫記』に登場することで有名なサソリ。ファーブルが本種を観察・実験したフランスのラングドック地方に由来します。日本では、「サハライエロースコーピオン」や「セスジサソリ」という呼び名もあるようです)。
夜行性の種であり、『ファーブル昆虫記』では、地中海沿岸の乾燥した地域に生息し、石の下に掘った巣穴に隠れていることが紹介されています (Colombo, 2011; 奥本, 1996)。しかし、本種はそれ以外にも様々な環境に適応でき、砂地、森林内、降雪があるほどの高山地域などにも生息していることが報告されています (Sadine et al., 2012)。
石の下から第1~3脚と終体を使って土をかき出して、7~8cmの巣穴をつくります。
ファーブルは、植木鉢で作った飼育容器やガラス製の飼育ケージ、庭園などで本種を飼育し、生活様式、婚姻ダンス、出産や産後の様子、毒の効き方について様々な観察・実験を行いました (奥本, 1996)。
ファーブルが観察・実験したフランス南部では、10月から4月までの約7か月間、ほとんど巣穴の中で生活し、全く何も食べないそうです。
4月から9月は繁殖期となり、婚姻ダンスによってオスがメスを巣穴へ連れていき、巣穴の中で交配するようです。交配の後、メスがオスを共食いする例が多く観察されています (奥本, 1996)。
1齢若虫の体長は9mm程度で、1度の出産で30~40個体の若虫が産まれるそうです (奥本, 1996)。
ヨーロッパ南部、中東、アフリカ北部に広く生息している本種は、これまでに10の亜種が記載されましたが (Fet et al., 2000)、形態的な違いから、現在では多くの亜種が別種として扱われているようです (Rein, 2017)。そうなると、本種の広い分布域も違ってくるかもしれません。また、ヨーロッパの個体に比べて、アフリカに生息している個体は危険であるとされているようですが (Rein, 2017)、分布地域による毒の強さの違いは異なる種であることが原因である可能性も出てきます。
出典 ▼
- Fet, V., WD. Sissom, G. Lowe, and ME. Braunwalder (2000) Catalog of the scorpions of the world (1758-1998), The New York Entomological Society, New York.
- Colombo, M. (2011) On Fabre’s traces: an important contributor to the knowledge of Buthus occitanus (Amoreux, 1789), Euscorpius, 117:1-10.
- 奥本大三郎訳・編 (1996) ファーブル昆虫記4 攻撃するカマキリ, 集英社.
- Sadine, SE., Y. Alioua and H. Chenchouni (2012) First data on scorpion diversity and ecological distribution in the National Park of Belezma, Northeast Algeria, Serket, 13(1/2):27-37.
- Rein, JO. (2017) The Scorpion Files. Trondheim: Norwegian University of Science and Technology. (https://www.ntnu.no/ub/scorpion-files/)