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マダラサソリ

~世界一分布の広いサソリ~

Ythier, E. 2018, ZooKeys:764: 27-90., CC BY 4.0
(Ythier, E. 2018, ZooKeys:764: 27-90., CC BY 4.0)

英名:

Lesser brown scorpion

学名:

Isometrus maculatus (DeGeer, 1778)

科名:

キョクトウサソリ科 (Buthidae)

分布:

先島諸島、小笠原諸島 (硫黄島)、インド、東南アジア、ポリネシア、オセアニア、北米 (カリフォルニア、ハワイ諸島)、中南米、アフリカ、ヨーロッパ (スペイン) (Fet et al., 2000; 相原・秋山, 2007; 青木, 2015; 久保, 2001)

体長:

45~70mm

マダラサソリの分布
マダラサソリの分布

比較的乾燥した場所の石の下などに生息しています (八重山諸島では家屋内に現れることもあります)。

一度の妊娠で10~20個体程度出産します (Lourenço, 2002)。また、本種のメスは卵巣内に貯精嚢という精子を蓄える構造をもち、一回の精包の授受で複数回妊娠を繰り返すことができます (Lourenço, 2002)。産まれてから5回脱皮し、6齢目で成体となります。

日本国内では沖縄県の先島諸島に分布しており、宮古島、石垣島、西表島、与那国島などでの分布が知られていますが (相原・秋山, 2007; 青木, 2015)、SNS等の情報も併せて考えると、本種は先島諸島全域に生息しているようです(マダラサソリは外来種なのか? 第4章)。また、人為分布ではありますが小笠原諸島の硫黄島にも分布しています (久保, 2001)。

サソリ目の中で最も広く分布しているサソリとして知られており、赤道付近を中心に地球を一周するような分布をしています。ハワイに唯一生息しているサソリとしても有名です。しかし、分布地域の多くが人為分布と言われており、過去に報告があっても現在まで個体群を維持している地域は少ないという考えもあります (Kovařík et al., 2016)。生息場所や近縁種の分布から、マダラサソリは元々はスリランカやインドに分布していた可能性があるともされています (Kovařík et al., 2016; Lourenço and Huber, 2002)。

マダラサソリは、1778年にDeGeerにより「Scorpio maculatus」として新種記載されましたが、それより前の1758年に新種記載された「Scorpio europaeus」がマダラサソリであるとの考えがあり、「Isometrus europaeus」という学名で記述されることもありました。しかし、1957年に動物命名法国際審議会 (ICZN) の決定により、現在は「Isometrus europaeus」の使用は禁止されています (Fet et al., 2000)。

日本では、1906年に岩川友太郎さんによって「マダラサソリ」という和名が命名されました (岩川, 1906)。

トピック:

外来生物法とサソリ

マダラサソリは外来種なのか?

出典 ▼

  • Fet, V., WD. Sissom, G. Lowe, and ME. Braunwalder (2000) Catalog of the scorpions of the world (1758-1998), The New York Entomological Society, New York.
  • 相原和久・秋山智隆 (2007) 節足動物ビジュアルガイド タランチュラ&サソリ, 誠文堂新光社.
  • 青木淳一 (編著) (2015) 日本産土壌動物 第2版 分類のための図解検索, 東海大学出版部.
  • 久保快哉 (2001) 硫黄島訪問記, やどりが, 188:64-68.
  • Lourenço, WR. (2002) Reproduction in scorpions, with special reference to parthenogenesis, European Arachnology 2000 (Proceedings of the 19th European Colloquium of Arachnology), 71-85.
  • Kovařík, F., G. Lowe, KB. Ranawana, D. Hoferek, VS. Jayarathne, J. Plíšková and F. Šťáhlavský (2016) Scorpions of Sri Lanka (Scorpiones: Buthidae, Chaerilidae, Scorpionidae) with description of four new species of the genera Charmus Karsch, 1879 and Reddyanus Vachon, 1972, stat. n., Euscorpius, 220:1-133.
  • Lourenço, WR. and D. Huber (2002) New addition to the scorpion fauna (Arachnida: Scorpiones) of Sri Lanka, Revue Suisse de Zoologie, 109(2):265-275.
  • 岩川友太郎 (1906) 本邦産の蝎類, 動物学雑誌, 18(207):5-12.
2014/03/15 更新
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